■9月2日「火曜日 PM7:00〜9:00」
今回から、ステージでの合同レッスンとなる。
いよいよ、本格的な歌作り曲作り合唱作りだ。
まず初めに発声練習を行なう。
♪まー まー まー まー まー まー まー ♪ひー いー はー やー あー まー にー
ピアノに合わせて声を出していく。
半音階ずつ音階が上がっていき、最広域まで上がったところで、今度は半音階ずつ下げて最低音域まで声を出す。
ここでのポイントは自分の一番の響きのある声で伸ばす事と、咽に力を入れないことのようだ。
特に、高音域や低音域では咽に力を入れると、なおさら声は出ないようである。
20分ほどの発声練習の後レクイエムに入る。
第1曲のイントロイトゥスから第8曲のラクリモーサまでを、それぞれ3回ほど繰り返して歌う。
レッスンはいつものように和気藹々の雰囲気で行なわれたが、終了間際になって珍しく先生が大きな声を出した。
歌い出しがはっきりしない。テンポが遅れる。平べったい声になってしまう。緊張感がない… 毎回のように指摘を受ける事柄である。
なかなか思うように歌えない合唱団に、それまで押さえていたものが思わず弾けたといったところか。
無理もない。それほどに、お粗末な合唱の出来であった。我ながら情けないくらいだ。
言い換えれば、先生はそれほどまでに真剣に合唱団と向かい合っておられる。
私たちはどうだろうか。週に一度のレッスン時だけの声出しになってはいないか。
せめて一日一度はレクイエムを歌わなければと思う。
■9月8日「月曜日 PM7:00〜9:00」
第9曲のドミネ イエズから、オスティアス、サンクトゥス、ベネディクトゥスまでを中心に合唱する。
講師の先生から発声方に付いて分かりやすいアドバイスがあった。
> 声楽の理屈は簡単だ。声を上手に鳴らせばよい。響かせればいい。
> 声の高さと幅を決めたら同じ太さで声を出す。
> いつも同じ範囲内で空気を送り込むようにして音を鳴らす。
> 急に狭めたり薄っぺら苦しない。
> ブレスしても声の太さを変えない。
> 前で歌わずに奥行きのある広がった声で歌う。
> 天井がまーるくて深い声を作る。
> 普段の声「地声」ではなくて、オブラートで包んだ声、格好つけた声、少し構えた声で歌う。
毎回のように指摘を頂いている事柄ではあるが、なかなか思うような発声が出来ない。
レッスンの度に、先生が♪「ドミネ イエズ クリステ…」のように各パートのフレーズを歌って手本を示してくれる。
口が縦になっているか横になっているか、その形や動きを真似ることで声を真似ることもある程度は可能だ。
口の形を見ることの出来ない私は、先生の「声楽の声」を真似て同じ様な声に鳴る様に心がけている。
私たちが日頃口ずさむ童謡や唱歌、あるいはカラオケでえんかなどを歌うときの声は普段の声であり、地声に近いものと思う。
これに対して「声楽の声」は、先生が言われるような少し構えた声であり、格好つけた声であり、奥行きのある太い声であると思う。
私が連想するところでは、オペラやミュージカルの声、宝塚の男役の声…と言ったところか。
明らかに日常とは異なる声であり、舞台の声、役者の声であり作った声である。
このように理屈では理解していても、そのように歌えないのが俄声楽家の悲しさである。
例えば、♪ドミネ イエズ クリステ というフレーズ。
「ドーミ」までは、まずまずの声と思っていると、「ネー」が平べったく地声になってしまう。
「イエーズ」は良かったと思ったら、「クリーステー」の「テー」で地声になっている…といった感じである。
歌っている途中で緊張感が弱まるのか、一般に、語尾の音が薄っぺらい音になってしまう傾向が強いようだ。
> 外国の言葉は母音で歌い母音で音の長さを取る。
母音が鳴る様に歌うと音が響く。
「あー えー いー おー うー」、全ての言葉は五つの母音から出来ている。
四分音符内には8分音符が二つあるように、8分音符内には16分音符が二つあるように母音を意識して伸ばすように歌うと響きのある音になるようだ。
結して音が「点」になってはいけないようだ。
> 高い音は声を張り上げても鳴らない。
> 声を張り上げないようにするには腹筋を使う。お腹に力を入れて構えて声を作る。
高音も低音も、おもいっきり構えて声を出すと響きのある声が出せる。
高い音にジャンプするとき、うっかりすると、「きゃー」といった具合に、咽で声を張り上げてしまい、薄っぺらい声になってしまうことが多い。
高い音にジャンプするときには、一つ前の音から意識して声を構え、奥行きのある天井の高い円い声を作る必要がある。
私は、どちらかと言えば高い音が出しやすいので、つい、得意になって声を張り上げていたように思う。
> 声と外気との接点は口であり、自分の口の中で、頭蓋骨に響くように鳴らさないと会場には響かない。
「頭蓋骨に響く…」は、なるほど納得させられる言葉である。
たしかに、口の中で響いた声は頭蓋骨に響いているように感じる。
更には、全身の骨が振動しているような実感さえもある。
口は「オンサ」のようなものであり、ここで作られた音を口から送り出して外気を振動させて響かせているのかもしれない。
> 世の中で自分の声が一番素敵、自分が一番上手だと思って歌うことが大切。
> 音楽をする際には、オーケストラの音と共鳴させるように、テンポや音の高さ音の流れなどに注意し意識して歌うと素晴らしい合唱になる。
■9月23日「火曜日 PM1:00〜4:00」
先週は都合によりレッスンを休んだ。2週間ぶりの顔合わせである。
レッスンを1回休んだだけなのに、ずいぶんと間隔が空いたようで、少し不安な気持ちで席につく。
先ず初めに、曲と曲との「つなぎ」の音取りを行なった。
14曲の中には前奏が入らずに、いきなり歌いだす曲が幾つかある。
前奏のある曲では何ら問題はないが、いきなりの場合では、その歌い出しの音が取りにくいこともある。
第1曲、レクイエム。これは前奏が入るので特に問題はない。
第2曲、キリエ。前奏がなくて、いきなり「キーリエ」と歌いだす。
レクイエムの最後「エーイス」が「ミ」で終わり、キリエの歌い出しが1オクターブ上野「ミ」の音で始まるので苦にならない。
第3曲、ディエス・イッレ。この曲も前奏がなくて、いきなり歌いだす。
前曲が「エレイソーン」と「ラ」で終わり、「ディーエース」と、これもオクターブ上の「ラ」で始まるので気にならない。
第5曲・レックス トレメンデ。これは前奏がたっぷりあるので問題はないが、歌いだしに1拍の休符が有る。ここを前奏につられて、おもわず飛び出してしまう声がある。
「おいおい…」って感じだが、私も人のことは言えない。
本番で飛び出しちゃったら、いったいどうなるのだろう。先生いわく、「銃殺だぞ!!」
第7曲・コンフタティス。一瞬ではあるが前奏が入る。前奏と同じ音で歌いだすので問題はない。
第8曲・ラクリモーサ。三拍子の前奏が入り問題はない。
第9曲・ドミネ イエズ。これも前奏がない。
ラクリモーサがアーメンの「ラ」で終わり、「ドーミネ」が、同じ「ラ」で始まる。
同じ「ら」の音でも、ニ短調とト短調で音の高さは違うのだが、なぜだか、「ラ」の音は取りやすいのである。
第10曲・オスティアス。これは前奏が入るので問題はない。
第11曲・サンクトゥス。前奏がなくて、いきなり「サーンクトゥス」と高い「ド」の音から歌いだす。
この「サンクトゥス」が一番難しくて、なかなか歌い出しの音が取れない。
前曲のフーガの「エーユス」が低い「ラ」で終わり、サンクトゥスが、高いほうの「ド」で始まる。
ゲードゥアからDドゥアへとか、ドミナンテとか言っておられるが何のことかさっぱりわからない。
音階では13度上がるようだが、曲の調子がト短調からホ短調?に切り替わるようで、単純に「ラ」から2オクターブ上の「ド」の音というわけには行かない。
「エーユス」の「ラ」を「ド」に置き換えて、ド→ソ→ソ のように音を取りなさいと先生は言われるが、なかなか簡単ではないのである。
そもそも、頭の中で音を切り替えている時間がないではないか。
「ド ソ ソ…」と考えている間にタクトが振られてオーケストラがサンクトゥスを奏でてしまっている。
ここは当てずっぽで、この辺の音という感じで、おもいきって歌うしかないだろう。
そして、オーケストラの音に瞬時に合わせる。
これは、簡単にはできないハイテクニックな歌唱法だと自画自賛しているのだが…
本当に、こんなんで本番を迎えていいものだろうか?
このサンクトゥスの冒頭は、格好良く高らかにうたうフレーズであり聞かせどころでもあるはずなのだ。
歌い出しの音取りもさることながら、実は私には、もっともっと重要なポイントが残されているのである。
■9月29日「月曜日 PM7:00〜9:00」
この日のレッスンは、市民会館からふれあい福祉センターに会場を変更して行なわれた。
講師のM先生も都合がつかないとのことで、パートリーダーが中心となってのレッスンだった。
正直言って、自分達の合唱の下手さ加減に愕然とした。
先生がおられないことも大きいが、一番の要因は会場の違いにある様に思われた。
市民会館は音楽専用ホールであるが、ふれあい福祉センターは一般的ホールだ。
ずっと以前にこのシリーズでも書いたが、音響効果が全く違うのである。
ふれあい…では伴奏のピアノも聞き取りにくいし、合唱の声も響かない。
それゆえに、パートの音が、生の声がそのまま聞こえてしまう。
外れた音やばらばらのパート、合唱のアラが気になるレッスンだった。
これが今の私達の真の合唱の実力なのだ。
発表会までは、いよいよ残り2ヶ月である。
う〜ん、モーツァルトは難しい!!
■10月7日「火曜日 PM7:00〜9:00」
指揮者と独唱者が発表される。
指揮者・山下一史「かずふみ」。ソプラノ・松井香代子。メゾソプラノ・井坂 惠。テノール・望月哲也。バリトン・太田直樹。
指揮者の山下氏は新進気鋭で評価も高く将来を大いに期待されている方との事。
高岡市民合唱団としては初めての登壇であり、初顔合わせが予定されている11月22日が大変楽しみである。
■10月21日「火曜日 PM7:00〜9:00」
指揮者の山下一史「かずふみ」先生が急遽来県されて私達のレッスンをみて頂けることになった。
当初の予定では、初顔合わせはリハーサル直前の11月22日であり、全く予想もしていなかった初レッスンとなった。
おそらく山下先生も、私達の合唱が、レクイエムの出来具合が気になり、一度聞いて見たかったのではなかろうか。
11月の指揮者との初レッスンを待ち遠しく思っていた私には本当に嬉しいレッスンであり充実した2時間だった。
合唱も含め、音楽は指揮者によって大きく変ってくる。
同じ曲でも解釈の仕方で表現方法が微妙に異なってくると思う。
本番で指揮者を見ることのできない私にとって、レッスンでの先生のアドバイスの一つ一つが曲作りの貴重な情報となる。
山下先生がレクイエムをどのように表現しようとされているのか、合唱団にはどのように歌ってほしいと考えておられるのか、曲のテンポは、音の延ばし具合は…
先生のアドバイスを聞き逃すまいと私は耳をダンボにして、そして、いつもに増して真剣に歌った。
先生の表現しようとする音楽に少しでも近づき、共にレクイエムを作り上げていきたいと思う。
レッスンは第1曲のレクイエムから始まり、最終のルクス・エテルナまで通して行なわれた。
音符の一つ一つについて、何故、この音なのか、この長さなのか。
子音を大切に歌うこと。歌詞の意味から発声法や表現の仕方。
ピアノやフォルテの歌い方や表現の仕方…
先生の指摘は詳細なところにまで及んだが、そのレッスンは丁寧で優しく、私たちにも分かりやすいものだった。
私が一番印象に残ったのは、「語りかける」という言葉だった。
私達の合唱は、譜面上の音符を単に歌っているだけと言われる。
音は美しいが、何も感じるものがないとのこと。
聞いている者に対して、働きかけるもの、呼びかけるもの、訴えるもの、曲の思いを表現してほしいと言われる。
それが、「語りかける」という歌い方であり聞いている人を感動させる音楽だと言われる。
う〜ん、なかなか難しい〜